孫子に学ぶITマネジメント CIOの予算獲得編(2)彼を知り己を知る

製造業A社のCIOが、社内の反発を抑えつつIT予算を獲得するための戦略を孫子の兵法を基にして展開。海外進出に伴う業務統一やコンプライアンス対策などを通じて、IT投資の意義を訴えます。

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【CIOの予算獲得場面】

 孫子の兵法論争編を活用して「CIOが社内の反発を抑えてIT予算を獲得する」場面を以下のように想定してみよう(図1)。場は製造業A社とする。

  • A社の国内業績は停滞し、途上国を中心とした海外進出に企業としての活路を見いだしている
  • CIOのB氏は上場企業の役員として情報システム部と全社システム予算を統括している。これまで海外も含めて数々の事業本部を経験した社内の論客
  • B氏は、海外進出に伴う業務の統一と経営情報の一元化、情報漏洩対策などのコンプライアンス(法令順守)とサイバー攻撃対策で、IT予算計上をもくろんでいる。
  • 国内Y事業本部は業績悪化で人員削減を実施しておりX事業本部長はIT投資に消極的
  • Y事業本部はこれまでのA社を支えてきた基幹事業であり、X事業本部長は現場からの人望も厚く社内でも次期社長候補として有力視されている。

 今回は、論戦の3段階の最初のステップとして(表1)、ここから状況分析と論理構成を行っていく。具体的には図1に示すような論理構成とその攻め方の基本パターンを図解できるようにならなければいけない。

表1●「孫子の兵法 論戦編」の体系化
段階 ステップ 概要
1.計画1-1.状況分析彼我の状況を詳細に分析する
1-2.論理構成確実に勝てる論理構成を計画する
2.謀攻2-1.情報収集相手内部から情報収集し、相手の事情を理解する
2-2.ネゴシエーション事前に相手と接触してできれば折り合いをつける
3.論争3-1. 自在な論理展開相手を上回る論理で主導権を獲得する
3-2. 主導権獲得相手の論理に変幻自在に対応し流れを呼び込む
3-3.詰め流れの勢いで最後の詰めをする
3-4.勝利の後勝っても相手を必要以上に傷つけない
図1●彼我の論理構成とその攻め方の基本パターン


【1計 1-1.状況分析】

 この段階に対応する兵法は以下である。

準備始計篇:算多きは勝ち、算少なきは勝たず
謀攻篇:彼を知り己を知れば百戦危うからず

 まずは、相手との論争になるポイントに関して、彼我の状況をよく分析することから始まる(「彼を知り己を知れば百戦危うからず」)。事前に状況分析して勝算を測ることで、「算多きは勝ち」となるのである。

 孫子の兵法の始計篇では、「五事」と言われる基本事項と、「七計」と言われる状況分析の比較基準が提示されている。そこでこれを現代語に訳して「五事七計分析」を作ってみた。

 五事とは「道、天、地、将、法」のことだ。原典では兵法の基本事項だが、ビジネス界の論戦に応用すると、論点の基本事項となる。

 七計とは「主、将、天地、法令、士卒、熟練、賞罰」のことで、原典では軍争の勝算を測る基準だ。ビジネス界の論戦では彼我の優劣に関する状況分析の基準となる。

 今回のケースで、CIOのB氏と、事業本部長X氏に当てはめると表2のようになる。

表2●五事七計分析表
分類項目 内容CIOのB氏事業本部長のX氏

論点に関して組織内の意思は統一されているか
論点は組織の外部環境から見て論理的に正しいか×
論点は組織の内部環境から見て論理的に正しいか
主張者のリーダーシップはあるか
論点は倫理的に正しく、関連社内規律は整っているか

どちらのトップが賢明か
どちらのリーダーが優れているか
天地客観情勢はどちらが有利か×
法令規律はどちらが徹底しているか
士卒発言力はどちらが高いか×
熟練どちらが論点に関して習熟しているか×
賞罰どちらが公正な人事を行っているか

 B氏は論客、X事業本部長は次期社長候補だけあってリーダーとしての資質は互角だ。グローバル化やコンプライアンス(法令順守)といった外部環境や客観情勢、論点の習熟度ではB氏が有利だが、内部環境から見ればX事業本部長の論理も間違いではない。社内の発言力では、B氏が圧倒的に不利だ。

【1計 1-2.論理構成】

 前述の状況分析により、この論争は「客観的/外部環境的に正しい論理を、不利な社内の内部環境でどのように押し通すか」という状況であることがはっきりした。そこでこの認識に基づいて、論理構成を具体化していく(図2)。

 この段階で関連する兵法は以下の3つである。

九地編:先ず其の愛する所を奪わば則ち聴かん
九変篇:智者の慮は必ず利害に雑(まじ)わる
    軍に撃たざる所あり

 この兵法に基づいて、どのように図1から図2へと、具体化していけばよいのかを述べよう。

図2●CIOであるB氏を取り巻く状況
[画像のクリックで拡大表示]

 九地篇の「先ず其の愛する所を奪わば則ち聴かん」は、「敵側が不意を突かれて防衛線にすき間ができたならば必ずそこから迅速に侵入し、敵の重要地点(愛する所)に先制の偽装攻撃をかけ、敵の出てくる所を捕捉して一挙に勝敗を決する」という意味である。

 これをビジネス界の論戦に応用すれば、相手の意表を突いて引き出した論理のほころびを突破口として速やかに追求し、窮した相手の答えを待って一気に主要論点を論破する、ということになる。

 例えば、X事業本部長は「業績向上と関係ないIT投資はしたくない」ので、情報漏洩などのコンプライアンス対策やサイバー攻撃対策は、認めたくない予算だろう。しかし、客観的/外部環境的にはこれは正しい認識ではないので、突破口となるほころびを探すことができる。具体的には、このような場合の突破口として、次の3種類が考えられる。

  • 1. 身に迫る危機
  • 公表はしていないがY事業本部の営業が顧客情報の入ったUSBメモリーを紛失した
  • Y事業本部の業務サーバーに毎日数千件のポートスキャンが外部からかけられている
  • 海外のハッカー集団がA社の業界をターゲットとしている2. 競合の動向と機会損失
  • 競合する企業は既に顧客情報漏洩の被害を受けている
  • 競合する企業は既にコンプライアンスとサイバー攻撃対策を講じている
  • 外資系企業はコンプライアンス基準の準拠が求めており、対応できない企業は取引できない3. 自分への跳ね返り
  • 一度、問題が起こると企業は売り上げとイメージで莫大な損失を被る
  • 問題を起こした競合企業の役員は引責辞任している

 特に、X事業本部長が次期社長候補であれば、最後の引責辞任の項はかなり響くかもしれない。このように相手が論点に習熟していない弱点に着目し、意表をつく突破口を探ることが大事だ。とはいえ相手もある程度は想定しているであろうから、これらの突破口候補はなるべく多い方がよい。

論理的な突破口は相手の論理のほころびだけとは限らない。九変篇に「智者の慮は必ず利害に雑(まじ)わる」とあるように、害だけでなく利も考える。もし論点とは別の部分で相手に利益があり、自分がそれを譲ったり提示したりすることで相手の妥協を引き出せるのならば、それも突破口と考えてもよい。

 例えばX事業本部長はこれまでA社を支えてきたY事業本部としてのプライドがあるだけに、「海外事業との業務統合や経営情報の一元化などとんでもない」と考えているのだが、この部分はB氏がある程度譲ってよい範囲だろう。

 Y事業本部はA社の基幹事業であるから、これまで様々な経営上のノウハウが蓄積されているはずだ。「海外との業務統合」を「Y事業本部をベースとした業務統合と経営情報の一元化」とすれば、X事業本部長のプライドは守られるし、現場としてもやりやすいかもしれない。どうせ海外事業では、国内とは別の経営的視点が必要であり、Y事業本部のノウハウや機能をベースにするだけでは不足する。つまりどのみち追加開発はするのだ。

 一方、X事業本部長にはどうしてもそこだけは触れてほしくない、それを突かれたら何が何でも引き下がらない、という論点もあるかもしれない。これが「軍に撃たざる所あり」ということである。それが事前に分かっているのならば論戦で触れてはならない。この場合、度重なるリストラ/合理化で疲弊したY事業本部の現場にさらなる合理化などの負荷を負わせることが該当するだろう。

 コンプライアンス対策やサイバー対策は全社的なことなのでY事業本部だけに負荷がかかるわけではないのだが、海外との業務統合に当たって、国内基幹事業であるY事業本部にも間接部門にも影響が及ぶかもしれない。この部分はあえて触れないことが大事だ。

 「Y事業本部をベースとした業務統合と経営情報の一元化」という形で譲歩しておくことで、「Y事業本部の社員が全社的に有効活用されることはあっても、いきなりリストラされることはないだろう」という期待感を持たせるだけで十分だ。

 以上の分析結果を図1の論理構成パターンに当てはめ、図2のように書き込んでいくことで、「情報漏洩やサイバー攻撃など社外の事実を論点とすることで突破口を開き、業務統合ではY事業本部をベースとすることで譲歩しつつ、Y事業本部に一層の負荷をかけるようなことには一切触れない」という論理構成が出来上がった(図3)。

図3●B氏の視点からの論理構成
[画像のクリックで拡大表示]

 ここまでで論戦の第1段階「計画」が完了したことになる。だがまだ論争に入る前に、もう1段階の準備が必要である。

 次回は第2段階である「謀攻」について説明しよう。


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